学習指導について

 
今回扱う「中和反応(酸・塩基反応)」や「酸化還元反応」は同じ範囲でも中学と高校では学んでいるレベルや目的が異なります。

中学理科では、身の回りで起きている現象をそのまま理解することが重視されます。実験を通して「何が起きたか」をつかむことが目標で、この過程を試験では問われます。反応の詳しい仕組みには踏み込みません。

一方、高校化学では、その現象がなぜ起こるのかを説明する段階に進みます。詳しくはここでは説明しませんが、酸・塩基の定義を理解して「化学反応式はなぜそうなるのか、説明できて自分で作れるようになる」ことが求められます。実は、酸・塩基反応で覚えるべき化学反応式は一つもないのです。酸化還元反応も同様に、どんな還元剤、どんな酸化剤があり、どんなふうにはたらくのかを「理解し、覚える」ことが学習での重要ポイントです。

なので、指導者側はレベルに応じて、思考を共有しながら「覚えるべきこと」と「理解すべきこと」の区分けを、受け手側は何が分からないのか・何を理解したのかを言語化する「習練」を行う必要があります。TAPでは生徒に以下のような理論学習の資料と、3割の部分に思考の整理を促す資料を用いて指導をしています。

 

ただ、色んなレベルの人がいます。例えば、こんな堅苦しい説明を聞いて実践できる人もいれば、ぼんやりとしか分からない人もいるでしょう。だからこそ、心の距離が近い存在――例えば歳の近いTAPの大学生のような仲介者――が間に入り、「あぁ、そういうことね!」と思える形に翻訳することが重要になります。
 

日常×学習

 
翻訳の手段の一つとして、「日常とリンクさせること」があります。「詰め込み」と言われがちな学習も、日常と結びつくところまで落とし込めば、社会に出た後も文化的体験の中に価値を見いだせるようになります。私がここ数ヶ月で実際に結びついた具体例をいくつかご紹介します。

陶芸家の方のアトリエに伺ったとき、人形に色をつける際に酸化還元の話が出てきました。

イベントで説明しますが、地球の表面、地殻付近に多いのは酸素・ケイ素・アルミニウム・鉄です。そのため、人形の材料土には鉄が含まれており、この鉄イオンの酸化還元で色を表現できます。

ワインのドメーヌ(自分の畑を持って、自分でブドウを育て、自分でワインを造る生産者)の方を尋ねたときも酸化・還元の話が出てきました。

ワインの熟成には、よくステンレスタンクや木樽(オーク樽)を使うのですが、そのドメーヌではコンクリートタンクを使っていました。

コンクリートタンクは多孔質で、ステンレスと異なり微量の酸素を通します。そのため、酸素が酸化剤として働き酸化還元反応が起こります。他の条件を揃えたステンレス熟成と比べると、年数の割に熟成が進み、色がやや褐色がかったワインになります。樽ほど酸素は通さず、また樽由来の香りも移らないため、品種の特徴をより直接的に表現できます。

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